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不動産売買が高騰すると現れる「地面師」


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いつもピカいちのブログをご覧いただきありがとうございます。企画宣伝の森戸です。

不動産売買が高騰してくると出てくるのが、詐欺集団である「地面師」です。最近ですと、1月に逮捕された、渋谷区の地面師グループです。こちらの被害総額は、1億9000万。2017年に積水ハウスが50億円以上をだまし取られたことで、地面師が大きな話題となりました。

「どんな手口で詐欺をはたらいたのか」「なぜ一流企業がだまされたのか」気になった方も多いと思います。

ですので、地面師について理解を深め、安心できる不動産取引に役立ててください。

詐欺は手っ取り早く稼ぐ手段

地主になりすまして不動産を騙し取る地面師詐欺は、今に始まった犯罪ではありません。古くは終戦間もないカオスで跋扈し、1990年前後の不動産バブル期や1990年代後半のマンション開発ブームにも暗躍してきました。そんな地面師事件が、昨今の都心の不動産高騰により、再燃しているのです。調べるきっかけになったのは、奇しくも私の地元五反田で起きた積水ハウスが騙された事件がきっかけでした。ここは、当初大正時代からある芸者の呼べる旦那様方相手の「怪喜館」という旅館でした。(当時目黒川でも屋形船があったのです)私がまだ幼少の頃、ここの女将さん(当時でも白髪だったので70歳ぐらいでしょうか)は、綺麗なかすりの着物を着て水を撒いている姿を良く見かけた事があります。夜は心地よい三味線の音色が聞こえてくる情緒溢れる旅館でした。その女将さんが亡くなり、旅館の高齢になってしまった板前さんがちょっと前まで、ビジネスマン向けに旅館を細々と経営していたのですが、庭の手入れや建物の手入れが出来なかったのか、建物は崩壊寸前状態に。高齢の板前さんがいなくなった後は、女将さんが妾筋の人間であった為、所有権は、本家に移ったそうです。そもそも所有者は旅館経営には興味がなく、更地にすると固定資産税が上がってしまう為、そのままにしていたようです。本物の所有者は旭化成に同じ時期に売却しています。これがこの旅館の真実。近所に住むものは、ここの事情もよく知ってたはずです。しかし、積水ハウスの東京マンション事業部の担当次長は近所の聞き込みもせず、2017年3月、海喜館が売りに出されているとの情報を得ると、情報源の人物が用意したペーパーカンパニーを仲介業者を挟み、海喜館の地主から55億円で購入する手はずを整えてしまったのです。

地面師たちのシナリオ

「その敷地は約600坪。抵当権は設定されておらず、売主は病気を理由に旅館を廃業した女将ただ一人であった。」というよくあるシナリオを積水側にしていたようです。2019年6月に地面師主犯格のカミンスカス操は逃亡先のフィリピンで拘束され、日本で起訴されました。(本人は起訴事実を否認。)また他の地面師一味たちも逮捕され、売主である旅館「海喜館」の女将を演じたなりすまし役の女は起訴内容を認めています。地面師たちは今回逮捕されたが、既に地面師たちに支払われた55億は回収できず仕舞い。騙されたお金は返ってきませんでした。

そんな事件がきっかけで、この手の事件を調べていくと、事件の多さに驚きました。ホテルチェーン「アパグループ」が12億6000万円も騙し取られていたのです。詐欺の舞台となったのは、赤坂2丁目の外堀通りの近くにある四角い形状の約120坪。

当時、駐車場として使われていたが、土地所有者は過去にこの土地を担保に借金をしたことがない資産家だったのです。アパ事件が起きたのは、2013年8月。しかし、アパは警視庁に被害相談をしていたものの、知能犯を担当する捜査二課の動きが鈍かったようで、もしかすると事件は迷宮入りするのでは?という不安も頭をよぎる程でした。こちらも地面師は逮捕されましたが、支払ってしまったお金は返ってきていません。

最近、同じような手口で被害にあってしまった友人も、騙した相手を刑事告訴したのですが、いっこうに埒が明かなかったのです。最近、地面師はどこにでも出没するらしく活動も活発化しています。彼らにとっては、詐欺行為を稼ぐ手段と考えているので、人が飛びつくような物件さえ見つかれば、何処でも良いのです。

毎週のように地面師事件の被害届が

地面師事件は日常茶飯に起きてます。とりわけ東京でこの数年、警視庁管内の各所轄の警察署にもたらされてきた被害相談の総数は、50件ないし100件といわれています。毎日とは言わないまでも、ざっと週に一度はどこかの警察署に被害届が届けられているといいます。地面師集団は、警視庁が警鐘を鳴らし続けている特殊詐欺、振り込め詐欺に似ています。通称、オレオレ詐欺では、電話役の「かけ子」、金を引き出す「だし子」がいて、背後に暴力団の影がちらついています。

地面師詐欺でも支度金を裏社会が担っているフシがあります。首謀者を中心に、騙せそうな物件を探してくる「仲介・ブローカー役」や「なりすまし役」、なりすまし役をスカウトする「手配師」、パスポートや印鑑証明など関係書類を偽造する「道具屋」、騙した金を振り込ませる口座を用意する「銀行屋」にいたるまで、役割分担が配置されています。このように、大人数で働く詐欺の事を、劇場型詐欺といいます。

事件化するのは氷山の一角

しかし、横行している地面師詐欺は、その数の割にクローズアップされてこなかったのです。理由は、当局が摘発できていないからです。騙された人が所轄の警察署に被害届や告訴状を持って行っても、受け付けてくれないのです。私も、友人に同行し、警察に行きましたが、証拠がなければ門前払いです。偽の証拠書類、騙した人間全ての写真、どのようなやり取りをしたかの音声データ等、事細かく記録、証拠品を持ち込む必要性があります。友人の場合は、偽造したと思われる契約書のみでしたので、難しいと刑事さんに言われてしまいました。被害届を受理してもらっても、捜査が進まないケースも多いと聞きました。誰のための警察なのか。虚しい気持ちを抱えながら、取材していくと、そんなケースは山ほどあり、むしろ事件化するのは氷山の一角だったのです。なぜ、そうなるか、といえば、一つには捜査体制の問題もあります。

地面師事件のような複雑な詐欺事件は、不動産取引や関係法令に通じているベテラン刑事が捜査を担うことになっているのですが、捜査を進めるためには、犯行グループのややこしい指示系統や役割分担の構造を解明しなければならない事にあります。仮に偽造書類を使ったなりすまし役を捕まえられても、首謀者の指示や犯意を立証できなければ、せいぜい有印私文書や有印公文書の偽造程度の犯罪にしか問えない背景があるのだそうです。地主が知らぬ間に売り払われ、他に転売されれば、その土地は取り戻すことができなくなってしまったケースや不動産業者から正規に買ったと信じて疑わない新築物件が、実は地面師事件の舞台だったケースもあありました。気が付くと、地面師詐欺の被害者になっている、なんてことがあるかもしれません。地面師にだまされた買主は、お金を支払ってもその不動産の所有者になる事はできません。

地面師詐欺の基本は、不動産の本当の所有者になりすまし、自分の物ではない不動産を買わせて、買主から売却代金をだまし取ること。

  • 空き地
  • 駐車場
  • アパート
  • ビル

など、その場に所有者が住んでいない不動産はたくさんあり、これらの不動産は現地をぱっと見ただけでは誰が本当の所有者なのかは分かりません。「その不動産を誰が所有しているのか」は法務局が管理している登記簿に書かれているのですが、その登記簿に書かれている本人になりすますことで、地面師は詐欺を成立させようとします。もちろん買主は、「今自分が代金を渡そうとしている人は、不動産の所有者本人なのか」を確認するため、本人確認を行います。それに対して、地面師である売主が

  • 本人確認書類を偽造する
  • 所有者本人の情報を頭に入れておき、所有者本人のようになりすまし役がふるまうことによって、買主が、目の前にいる売主が所有者本人だと信じ詐欺グループの銀行口座にお金を振り込んでしまえば、詐欺は成功となります。

地面師は買主に対して、本来の所有者を装うために偽造書類を作成して提出してきます。

  • 運転免許証
  • パスポート
  • 印鑑証明書
  • その他公的書類
実際に積水ハウスに提出された本人確認書類

私が友人から見せられたのは、偽の印鑑証明と偽の登記簿謄本でした。(透かしも入っており、全く見分けがつかない)とそれらの偽造を見破るのは、不動産登記、書類作成のプロである司法書士でも難しいと言われています。何故なら、運転免許でさえ、それを偽造できる印刷技術のある人間も絡んでいるからです。因みに、偽印鑑を作るのに、1つ2万5千円〜で、通帳残高の水増しは3万円〜等値段があるようです。不動産売買の流れからすると、買主がお金を売主に渡してしまってから、法務局で書類偽造が発覚したとしても、登記申請が却下されるまでの間、数日間のタイムラグが発生してしまう。
つまり地面師グループに逃げる時間が発生してしまう事がネックです。なので、お金を振り込む前に、念入りな調査が必要になります。私の場合、法務局で登記書類を事前に取り、売主の方の家を訪ねまて本人確認します。(探偵みたいな話ですが)調査によると、こんな物件が危ないといった傾向があるので、ご紹介します。

●所有者が高齢の物件

所有者が既に亡くなっている、もしくは老人ホームなどの施設に入っている場合などは、取引途中に本当の所有者が表に出てくることによって人目に触れるという事態になりづらいので、地面師グループにとっては所有者になりすますことが容易になります。

●空き家、もしくは更地の状態が長く続いている物件

このような物件は、本当の所有者が現地に住んでいないため、たとえ偽の所有者を含む地面師グループと一緒に現地を訪れたとしても、地面師グループの嘘がばれにくくなります。また近隣への聞き込みを行なっても、本当の所有者の事を知っている人がいる可能性が低いため、本人確認が行いにくいというのが特徴です。

●担保権の設定がない物件

銀行などが所有者に対しローンの貸し出しを行なっている場合に抵当権の設定がされることがあるのですが、それを抹消するために所有者が銀行とやり取りする必要があります。そのため、銀行にあらかじめ本人確認書類を出している場合など、なりすましがしにくいため、地面師から守られやすいという事になります。
逆に言うと、担保権(不動産では抵当権)の設定のない物件では、取引に関係するステップ、人数がそれだけ少なくなるため、地面師にとって詐欺のために扱いやすい物件となります。

以上のような物件を購入しようと考える場合は、その物件を知る近所の人に聞くといいでしょう。その物件の周りをよく見てください。周りに古そうな家で道路を掃除している高齢者や、長くやっていそうな店の店主に話を聞くなどです。このような聞き込みをする事で、おおよそ、分かる事実があります。例えば、詐欺でなくても、「この家の持ち主は、〇〇という老人ホームに入ってるよ」とか、「ここで〇〇年前に自殺があってね」とか色々な話が聞けるはずです。

まずは、聞き込みをしてみる事をお勧めします。物件を見に行く時は内見とセットで行うようにしてください。



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